東神田経営事務所 Presents [ 緊急資金繰り対策と不良債権回収 ]

7.担保の種類(一)
質権、抵当権、留置権、先取特権


 Aさんが銀行から3000万円のお金を借りようとして、
「自宅の土地を担保にします」
といえば、銀行はAさんの土地を調べるため、登記簿謄本などにあたって確認し、価値が3000万円以上あると確認した上で、土地に抵当権を設定して、実際の貸出ということになります。この場合、銀行としては担保の取り方として最も一般的な抵当権を設定することになるでしょう。しかし、事項に示したように場合によっては、「代物弁済の予約」などという方法をもって担保とすることも出来ます。

 銀行は、Aさんが差し出した土地を手に入れることが目的ではありません。融資した債権を強めることが目的で、最悪Aさんが借金(債務)の返済が出来なくなったとき、抵当権を設定した土地を処分して、「他の債権者に優先して弁済を受けることができる」ということが保証されるわけです。

 物的担保は、「特定の物(財産)を差し出して債権を担保しよう」とするもので、この物による担保にもいろいろの種類があります。その代表的なものを列挙してみると次のようになります。なおこれらは、民法上典型的な担保物であるという意味で、「典型担保」と言うこともあります。

一 質権とは何か
  AさんがBさんに50万円借りたとします。その時50万円の担保としてAさんはBさんに毛皮のコート(債務者本人の物、ないしは第三者の物でもいい=物上保証人)を質に入れます。50万円が無事返済されれば毛皮のコートはAさんに返却されます。一方、50万円が支払われないときは、毛皮のコートを売却し、他の債権者に優先して、代金から弁済を受けることが出来ます。

  質権の特徴は債権(お金を貸した人)の手元に物を置いて占有するため、ほかの債権者にAさんが優先権があることを知らしめる必要がありません。逆に言うと債権者に引き渡すことの出来ない物は質権には不向きだ、ということも出来ます。ですから現実には土地や建物の担保には、不向きであるということが出来ます。登記や登録が出来る物は抵当権が便利だし、登記や登録が出来ない物で、なお債権者に物を引き渡すことが可能な物は質権設定が便利だといえます。一方この二つの方法ではなお不便だという場合も現実にはあります。そういう場合は後述するような譲渡担保という方法が多くとられます。

二 抵当権とは何か
  AさんはBさんから1000万円借りることにしました。そこでAさん(第三者でもいい)の土地(2000万円相当の価値がある)を担保に差し出し、抵当権を設定します。こうすることでBさんは、貸したお金が返してもらえないときは、この土地を処分して優先的に弁済を受ける権利を得たことになります。つまり貸した1000万円の回収をより確実なものにします。ただし、抵当権は他の債権者など第三者に主張するために、登記をしておかなければ優先権を主張することは出来ません。登記をしていない抵当権は意味がないということになります。また抵当権の特徴としてあげられるのは、差し出された土地は債務者ないしは物上保証人の手元に置きその利用を許すという形になります。ですからその土地で駐車場を経営しているとすると、駐車場の収入は債務者のAさんのものであるということです。

三 留置権とは何か
 資金繰りに奔走する中小企業の場合、留置権というのはあまり縁のないことかも知れませんが、債権における担保の知識としては基本的なことですから理解しておきたいものです。

 例えばAさんが時計をB時計店に修理に出したとします。この時、B時計店は修理代金が支払われるまで時計を留置(Aさんに渡しません)することができます。修理代という債権が弁済されたとき初めて時計をAさんに戻すという関係です。この留置権は法定担保物権といい、債権者・債務者が契約を交わして留置権が生ずるというものではありません。ただし、Aさんの了解もなく時計を持ち出して修理して、代金を支払わなければ留置するということは出来ません。

四 先取特権とは何か
 会社が倒産したときなどには先取特権が問題になります。この先取特権というのは「債権者平等の原則」に優先して弁済してもらえる特権があるということです。 例えば米屋さんがAさんにお米を売っていたとします。このお米の代金が滞納していたとして、Aさんが倒産した場合にはどうなるかというと、これは「日用品の供給により生じた債権」としての先取特権により、他の債権者より優先して払ってもらえます。

 なぜこうした先取特権があるのかというと、Aさんの会社が倒産の危機に直面しているなどという事態になったとき、米屋が不安を感じてAさんにお米を売るのも躊躇するということになれば、生きることさえ難しくなります。人として最低限度は社会的にも守られなくてはなりません。こうした意味合いを含めて先取特権というのは認められているのです。

 こうした先取特権が主張できる債権は、

1 共益の費用
2 雇人の給料
3 葬式の費用
4 日用品の供給により生じた債権

などであり、法定担保物権として債権者・債務者間の契約がなくても成立しています。なお国税、地方税もこの先取特権の中に含まれます。

 

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1.貸したお金が回収できない 6.息子名義の土地の担保は要注意
2.誰と取引をするのかが大切 7.担保の種類(一)
3.債権は回収できないことも 8.担保の種類(二)
4.相手の会社が倒産したら債権はどうなるか 9.担保の取り方も物によって異なる
5.債権を確かなものにするには担保が必要