東神田経営事務所 Presents [ 緊急資金繰り対策と不良債権回収 ]

8.担保の種類(二)
現実の取引から生じた担保


 質権、抵当権、留置権、先取特権の四つの担保は、前に述べたように典型担保といいます。これに対して、実際の取引上の利便性から生み出されてきた担保を、非典型担保といいます。非典型担保というのは無味乾燥な法律用語の範囲を出ない未熟な日本語であまり使う必要もないでしょう。しかしその内容は十分に理解しておく必要があります。

一 譲渡担保
 実際の取引によく利用される担保の一つです。例えば工場の高価な機会を担保にしてお金を借りたいとします。この時機会は動産ですから土地や建物と違って登記・登録をすることは出来ません。ですから抵当権を利用することが出来ないのです。一方質権を設定しますとその機会を債権者に引き渡さなくてはなりません。機会を債権者に引き渡すと生産活動が出来なくなり債務も返済できません。そこでこの譲渡担保を利用するわけです。譲渡担保は債権の担保として一旦機械を債権者に譲渡します。そして債権者から機械の使用を認めてもらい、債権を弁済した時点で、機械の所有権を返してもらうという方法です。細かな内容についてはいろいろと検討すべき点はありますが、動産、不動産について譲渡担保というのは現実的に広く行われてきました。

二 買戻し・再売買予約
  土地の売買の契約時に「買戻しの特約」を行っておくことです。この「買戻しの特約」というのは、例えばAさんが会社の手形を落とすのに1000万円必要となり、Bさんに自分の会社が所有している土地を1000万円で売ったとします。しかしAさんはその土地を本当に手放したいとは思っていません。債務を返済し終わるとただちにその土地を取り返したいのです。こういったときに買戻しの特約を行っておけば、買主が払った代金および契約の費用を返還して、その売買を解除する(買戻し)することが出来ることをいいます。

 この場合、実質的には土地を担保にお金を借りたと同じ機能を果たしていることになるわけです。買戻しは登記することにより、買戻権を第三者に対抗(知らしめる)することが出来ますが、その登記は売買契約と同時でなくてはなりません。また買戻しの可能な期限は10年と限られています。

 ただし、「買った代金と契約の費用を支払うことで買戻す」というのは買主にあまりメリットがないので最近ではあまり行われていません。

 再売買の予約も買戻しの特約に似ていますが、将来売った不動産を買戻すという予約をし、その権利を確保するために、売主は所有権移転請求の仮登記をしておくことになります。再売買予約は買戻しに比べて二度目の売買の価格を自由に決めることが出来るので、より多く利用されます。

三 所有権留保
 商品の月賦販売などの場合に、売主は買主が代金を完全に支払うまで、所有権を買主に移さないで留保しておくということですこうすることによって販売代金という債権を担保するわけです。

四 代物弁済の予約、仮登記担保
 
実際の金融でもよく利用されるものです。お金を借りた場合はお金でへんさいするのが一般的ですが、代物弁済というのは、これを他の物で返済することをいいます。土地を担保に、2000万円の借金をしている人がいるとします。この土地が抵当権という形で担保に取られていた場合、債務の返済がなされない場合は、土地を処分して金銭にかえ、そこから優先的に返済を受けることができます。 ところが、抵当権設定時に同時に「代物弁済の予約」という方法をとることもできます。この予約上の権利を確保するために仮登記を行います。この仮登記を「仮登記担保」とも言います。

 「代物弁済の予約」は債務の返済がない場合、担保に提供された特定の土地を、債務に変わる物として債権者のものにする(帰属させる)という内容の予約です。ですから、債権者と債務者が契約時に了解しあって「抵当権」と「代物弁済の予約」を結んでおけば、債務の返済がない場合、担保に提供された土地を抵当権に従って処分するか、あるいは代物弁済の予約によって自分の物にするか、の二つの選択肢を手に入れることが出来ます。今日のように土地の値段が下がっているときは、土地を競売にかけても債権の全額に満たないなどという場合もあります。それならば代物弁済の予約に従い、土地を手に入れてその利用法を考えた方が得策だといえます。

 以上のように、現実の取引から生じた担保には四つの方法があります。中でも譲渡担保などはよく利用される物ですから十分に理解しておく必要があるでしょう。いずれにせよ、担保に「物」を取るといっても色々な担保の取り方があります。どの方法を採用すれば一番いいのかは「物」によってもことなりますので、担保の内容をよく考えて、最も相応しい方法を講じることが確実な債権回収には必要だということができます。

トップページ 当事務所に寄せられるご相談内容 債権回収代行について 東神田経営事務所について

特集
「緊急資金繰り
対策と不良債権
回収」  メニュー

1.貸したお金が回収できない 6.息子名義の土地の担保は要注意
2.誰と取引をするのかが大切 7.担保の種類(一)
3.債権は回収できないことも 8.担保の種類(二)
4.相手の会社が倒産したら債権はどうなるか 9.担保の取り方も物によって異なる
5.債権を確かなものにするには担保が必要